
ふたりの異端が、静かに向かい合っている。
一台は、イタリアの美学を背負うマッスルスポーツ「ドゥカティ・ディアベルV4」。
もう一台は、日本が世界に誇ったパワークルーザーの金字塔「ヤマハVMAX」。
数字では測れない魅力。スペックを超えた価値。
今回は、このふたつの“異端の傑作”を比較しながら、
バイクにとって「唯一無二」とは何か――
選ぶのは、性能ではなく“共鳴するかどうか”
あなたの中に、何かが響いたなら。
それは、もう出会ってしまったということかもしれません。
この記事でわかること
- ドゥカティ・ディアベルV4とヤマハVMAXの基本スペックと開発背景
- 両モデルのデザイン性・存在感・所有満足度の比較
- 実際の走行性能・乗り味の違い(街乗り・高速道路など)
- 価格・維持費・保険など現実的な所有コスト
- 中古市場での価格推移と将来的なリセールバリュー
- 絶版車(VMAX)と現行高級車(ディアベル)それぞれの投資価値
- 「人生に残る一台」をどう選ぶべきか、価値観別に解説
異端の2台、それぞれの出自
まず、この2台のバイクがなぜ“異端”と呼ばれるのか、その背景から紐解いていきましょう。
ディアベルV4|ドゥカティが生んだ“異形のマッスルクルーザー”
ディアベルという車名は、イタリア・ボローニャの方言で「悪魔(Diavel)」を意味します。
ドゥカティといえばスーパースポーツのイメージが強いですが、2011年に初代ディアベルを投入したとき、そのシルエットと思想は世界中のライダーを驚かせました。
クルーザーのようにリラックスしたポジション、しかし中身は完全にスーパーバイク――
それがディアベルの最大の特徴です。
そして最新モデルであるディアベルV4は、ドゥカティの誇る、V4グランツーリスモエンジン(168馬力)を搭載し、さらなる次元へと進化。
マッスルバイクとしての迫力と、モダンで洗練されたフォルムが共存するその姿は、もはや“走る芸術品”と呼ぶにふさわしい存在です。
ヤマハ VMAX|世界を震わせた「加速」の神話
一方、VMAX(ブイマックス)は1985年、アメリカ市場向けに誕生しました。
その最大の魅力は、何といっても“圧倒的な直線加速”。
Vブーストと呼ばれる加給機構を搭載した1200ccエンジンは、「暴力的」とすら評される加速感を生み出し、当時のライダーたちの心を掴んで離しませんでした。
2009年には、1700ccに進化した新型VMAX(2代目)が登場し、200馬力を超えるモンスターパワーを獲得。
しかしその後、2020年に惜しまれつつ生産終了。現在はプレミア価格で取引される“絶版の名車”となっています。
共通点|ジャンルを超えた「唯一無二」
この2台は、どちらもスーパースポーツでもなく、ツアラーでもない。
けれど、ただのクルーザーとも言い切れない。
それぞれが、「メーカーの挑戦」そのものであり、
スペックや分類では括れない、“存在そのものがジャンル”とすら言えるバイクです。
そんな2台が、偶然にも同じ時代に交差したこと。
それ自体が、奇跡のように感じられます。
デザインと存在感の比較
「見た瞬間に心を奪われる」
そんなバイクは、そう多くはありません。
けれど、ディアベルV4とVMAXは、その“少ない例外”に確実に入る存在です。
ディアベルV4|未来的な彫刻、走る機能美
ディアベルV4を初めて見たとき、多くの人がこう感じます。
「これはバイクというより、近未来のアート作品だ」と。
フルLEDの細身なヘッドライト、エッジの効いたボディライン、
そして特徴的なシングルサイドスイングアームと極太リアタイヤ(240mm)。
どの角度から見ても、“彫刻”のように計算され尽くしたデザインが浮かび上がります。
V4エンジンのレイアウトを活かしたコンパクトな車体と、
高級感のあるディテール処理――
まるで都会に似合う戦闘機のような美しさと獰猛さが、ひとつの車体に同居しているのです。
ヤマハ VMAX|暴力的で美しい、“塊”としての美学
一方のVMAXは、ディアベルとは対照的に、重厚な塊感で勝負するスタイル。
とにかくマスが詰まっていて、前から見ても横から見ても「これ、何かすごいことが起きそうだ」と感じさせる迫力があります。
特に4本出しのエキゾーストマフラーと、フロントから見たときの筋骨隆々なフレームラインは、
“マシンというより、獣”といった表現がふさわしい。
洗練よりも荒々しさと本能。
これこそが、VMAXの美学であり、絶版となった今でも色褪せない魅力の正体です。
存在感の比較|ただ停めてあるだけで、空気が変わる
この2台には、共通して「停まっているだけで場の空気が変わる力」があります。
街のカフェ前に置かれたディアベルは、“洗練された異端”。
ツーリング先のパーキングに鎮座するVMAXは、“圧倒的な重低音”。
どちらにも、「ただ速いだけのバイクにはない物語」が詰まっていて、
それが見る人の記憶に残り続けるのです。
走行性能・乗り味の違い
カタログスペックだけを見れば、どちらも“ハイパワー”という言葉に収まります。
けれど――
実際に跨ったときの感覚は、まるで別世界。
それぞれが持つ“走りの美学”は、数字では伝わらない体験そのものです。
ディアベルV4|俊敏で快適、それでいて猛獣のような加速感
ディアベルV4の最大の特徴は、その“しなやかな猛々しさ”にあります。
スロットルを開けた瞬間に感じるのは、
「軽い」と「速い」が同時に押し寄せてくる不思議な感覚。
クルーザーのようなゆったりした姿勢からは想像できないほど、
バイク全体が軽やかに、そして意志を持って前へ出ようとします。
V4グランツーリスモエンジンは、実に滑らかで扱いやすい。
でも、その気になれば一気に168馬力の牙を剥いてくる。
電子制御も充実していて、ツーリング・街乗り・スポーツ走行のすべてに高次元で対応。
「自分の技量以上のことを、そっと補ってくれる」
そんな優しさと凶暴さが、絶妙なバランスで共存しています。
ヤマハVMAX|理性を超える、魂を揺さぶる加速
対して、VMAXの走りは“野生”。
とにかく、スロットルを捻った瞬間の“怒涛の押し出し感”は、他のどのバイクでも味わえない領域です。
200馬力超のV4エンジンが、低回転からでも全身をぐわっと押し出してくるあの感覚。
乗っていて、明らかに“身体が引きちぎられそう”になる。
VMAXには最新の電子制御こそありませんが、逆にそれが「乗り手に全てを委ねる感覚」をくれます。
恐ろしい。でも、気持ちいい。
長距離ツーリングにはやや疲れるかもしれません。
けれど、「乗る時間そのものが儀式」のように感じられる。
それがVMAXの世界観です。
どちらが“楽しい”かは、求めるもの次第
ディアベルは洗練された高性能、
VMAXはむき出しの本能と快楽。
どちらが正解かではなく、
「どんな感覚をバイクに求めているのか」で評価が分かれます。
走りという体験に、あなたは“快適さ”を求めますか?
それとも、“心を揺さぶられる瞬間”を選びますか?
価格と維持コストの実際
どれだけ魅力的なバイクでも、“現実”と向き合う瞬間は必ずやってきます。
購入価格、維持費、パーツ供給、そして「乗り続けられるか」。
ここでは、ディアベルV4とVMAXを、実際に所有したときのコスト感覚から比べていきます。
ディアベルV4|高級車らしい価格感と、意外な扱いやすさ
ディアベルV4の新車価格は、約350万円〜400万円前後(2025年現在)。
選ぶカラーやオプション(鍛造ホイール、アクセサリーパーツ等)によっては、総額450万円近くになることも珍しくありません。
一見すると高価に見えますが、整備性・燃費・電子制御の安定性も高く、
定期点検やパーツ交換の頻度は想像以上に“優等生”です。
【維持費の目安】
- 年間メンテ費:10〜15万円前後(正規D整備ベース)
- 保険・税金:5〜6万円
- タイヤ交換:前後で約8〜10万円
- 燃費:街乗り約14〜16km/L、高速は20km/L近く出ることも
高級車ではありますが、日常使いも可能な“現代の成熟したモンスター”とも言えます。
ヤマハVMAX|車体価格よりも“絶版の重み”が本当のコスト
一方のVMAX(1700ccモデル)は、現在新車販売は終了。
そのため購入は中古車市場のみとなります。
プレミア価格が進行しており、状態の良い個体は乗り出しで250〜350万円前後。
カスタム車や極上車は400万円を超えることもあります。
問題はそこではなく、“維持していく”ことのハードルです。
【維持費の目安】
- 年間メンテ費:15〜20万円(純正部品が出にくいケースあり)
- パーツ供給:一部は海外取り寄せ or リプロ品依存
- タイヤ交換:ディアベルと同等(8〜10万円前後)
- 燃費:街乗り約10〜12km/L(燃料タンクが小さめ)
特に注意したいのは、VMAXは「メカに強いショップが近くにいるかどうか」で満足度が大きく変わるということ。
つまり、“買うお金より、維持する覚悟”のほうが重要になってくるモデルです。
高級バイクは、「維持できる自信」と「惚れられるかどうか」で選ぶ
どちらも高価でありながら、価値ある1台。
けれど、維持コストや扱いやすさには明確な違いがあります。
- 「長く乗っていきたい」「ストレスなく付き合いたい」なら、ディアベルV4
- 「多少手間でもいい」「このバイクに惚れてしまったなら」VMAX
バイクは“維持する愛”が問われる趣味でもあります。
その覚悟すらも、選ぶ判断基準になるのかもしれません。
資産価値・リセールバリューの視点
「ただの趣味」では終わらない――
高級バイクを手にする人のなかには、“資産”としての価値を意識する方も増えています。
それは決してお金の話だけではなく、
“この1台が、時間とともにどんな意味を持つのか”という視点に近いのかもしれません。
VMAX|絶版という宿命が生む“価値の伸びしろ”
VMAXの大きな強みは、すでに生産が終了しているという事実です。
とくに2020年以降は良質な中古車の流通が減少し、
海外マーケットでもプレミア価格で取引される個体が増えています。
- 国内中古価格:250万円〜400万円(2025年現在)
- 輸出ルート(北米・東南アジア)では400万〜500万円での成約例も
- 状態が良ければ数年後に値上がりする可能性が高い
つまりVMAXは、今の時点で“買えること自体が貴重”であり、
オーナーになった時点で「持っているだけで価値が育つバイク」でもあるのです。
ディアベルV4|ドゥカティブランドの“安定資産”
対してディアベルV4は、まだ現行モデル。
ただし、「ドゥカティのなかでも異端」という位置づけと、
V4ユニット搭載というスペックの希少性から、今後のリセールにも期待がもてます。
- 新車価格:約350〜400万円
- 初年度登録3年落ちで約300万円〜(国内相場)
- 海外評価も高く、カスタム車はむしろ価値上昇傾向
そしてなにより、ドゥカティというブランド自体が世界的に評価されており、
“年数が経っても下がりづらい”という安定感があります。
また、「美しさ」と「技術」が共存しているモデルは、
アート資産的な視点で選ぶ富裕層オーナーにも好まれる傾向があります。
どちらも、ただの“乗り物”では終わらない
VMAXは、“過去”が価値を高めているバイク。
ディアベルV4は、“今”を所有しながら“未来”に育つバイク。
どちらも、「買ってすぐ手放すようなバイクではない」という点で一致しています。
時間とともに、自分の人生に深く刻まれていく一台。
だからこそ、資産としての価値も、静かに育っていくのです。
どちらが“買い”か?ライダータイプ別おすすめ診断
ここまで比較してきたディアベルV4とVMAX。
それぞれに明確な魅力があり、明確な個性があります。
では、どんな人にどちらが合うのか。
ここでは“ライダーの価値観”ごとに、おすすめの視点を整理してみます。
サーキットより「日常の贅沢」を求めるあなたへ
→ ディアベルV4
- 毎週乗らなくても、所有していること自体が喜びになる
- 最新技術や快適装備を、ストレスなく味わいたい
- 都会でも、ツーリングでも“見られるバイク”に乗りたい
ディアベルV4は、“高級車”としての総合力がとても高く、
それでいて“変人っぽくない”絶妙なバランスを持ったバイクです。
洗練された異端を、静かに味わいたい人におすすめです。
バイクに「本能」や「衝動」を求めるあなたへ
→ VMAX
- バイクを“生き物”のように感じて付き合いたい
- 最新技術はいらない、自分の腕と感覚で操りたい
- 他人とかぶらない「唯一無二の存在」が欲しい
VMAXは、もう新しくはなりません。
でも、それが“完成された世界観”を持つ証でもあります。
もし、このバイクに「惚れた」なら――
その直感こそが、最大の正解かもしれません。
まとめ|“性能”でも“スペック”でもない選び方があっていい
この2台は、数字では語り尽くせないバイクです。
だからこそ、あなたがどんな風に乗りたいか、
どんなふうに“人生に置きたいか”で選ぶのがいちばん自然です。
高級バイクには、“日常を変える力”があります。
そして、ときに人生そのものに余韻をもたらしてくれる存在にもなり得ます。
選ぶとき、迷ってもいい。
でも、惹かれるほうがあるなら、それがもう答えなのかもしれません。
よくある質問(FAQ)
Q1. ディアベルV4とVMAX、初心者にはどちらが扱いやすいですか?
A. 扱いやすさで選ぶなら、電子制御が充実したディアベルV4がおすすめです。
VMAXはパワーの出方がダイレクトで、重さもあるため、ある程度の経験と体力が求められます。
ただし「惚れた方に乗る」覚悟があれば、どちらも愛すべき一台になります。
Q2. 維持費が高そうで不安です。実際の負担感は?
A. ディアベルは輸入車ながら比較的維持しやすい設計になっており、年間10〜15万円程度の点検費用が目安です。
VMAXは絶版車ゆえパーツの入手や整備に時間や費用がかかることもありますが、「旧車を愛する感覚」があれば許容できる範囲です。
どちらも“お金”以上に“心”の余裕をくれる存在です。
Q3. バイクを資産として考えるのは現実的ですか?
A. はい。近年は「高級バイク投資」という考え方も広まりつつあり、ディアベルやVMAXのような希少性の高い車種は、実際に価格が上昇傾向にある例も多いです。
特にVMAXは絶版車として、今後ますます希少価値が高まると予想されています。
Q4. 見た目だけで選ぶのはアリですか?
A. むしろ“見た目で惹かれる”という感覚は、とても大切です。
ディアベルにもVMAXにも共通しているのは、「惚れた理由が、性能じゃない」というオーナーが多いこと。
長く付き合うからこそ、“ときめき”は大事な選択基準になります。
Q5. この2台以外にも、異端で魅力的な高級バイクはありますか?
A. はい、あります。たとえばMVアグスタの「ブルターレ1000RR」や、カワサキの「H2 カーボン」、ドゥカティの「Xディアベル」なども、独自の世界観と資産性を兼ね備えたモデルです。
今後、そうしたバイクも特集予定ですので、気になる方は当ブログをブックマークしておいてくださいね。