
クラシックバイクに憧れを抱く人なら、一度は耳にしたことがあるはずです――
「トライアンフ・ボンネビルT120」と「ドゥカティ900SS」。
片や現代技術をまとった正統派クラシック、片や今なお語り継がれる伝説の旧車。
この2台を見比べると、ただのスペックでは測れない“何か”が心を揺さぶります。
カフェレーサーとしての美学、乗り味、リセール価値──。
今、手に入れるならどちらを選ぶべきか。
この比較記事では、性能や維持費だけでなく、「所有する歓び」や「資産としての価値」にまで踏み込んで、じっくり解説します。
記事でわかること
- ボンネビルT120とドゥカティ900SSのスペックや基本情報
- 現行クラシックと旧車、それぞれの乗り味・スタイルの違い
- カフェレーサーとしてのデザイン性やカスタムの方向性
- 維持費・メンテナンス性・信頼性など、実用面での比較
- リセールバリューや長期的な資産価値の考え方
- どんなライダーにどちらのバイクが向いているか
ボンネビルT120とは?|現行クラシックの王道モデル
ボンネビルT120は、いわば“クラシックの完成形”ともいえる一台です。
1950年代から続く伝統を背景に持ちながら、現代のテクノロジーと快適性をしっかりと備えているのが最大の魅力。
見た目は往年の英車そのもの。でも跨がって走り出せば、スロットルの反応もブレーキの効きも、どこまでも現代的。
たとえば、ライドモード切替やグリップヒーターなど、普段使いにも嬉しい装備が標準で搭載されています。
しかも、トライアンフという老舗ブランドが持つ信頼感は絶大で、整備性やパーツ供給の安定さも含めて“所有の安心感”が段違い。
そのうえ、少しカスタムを加えるだけで、T120はあっという間に自分だけのカフェレーサーへと姿を変えてくれます。
「昔ながらのスタイルを、今の時代に快適に楽しみたい」
そんなライダーにとって、ボンネビルT120はまさにベストアンサーかもしれません。
ドゥカティ900SSとは?|伝説的な旧車カフェレーサー
ドゥカティ900SS――
この名前に胸を熱くする人は、きっとバイクの「魂」に触れてきた人だと思います。
1970〜90年代のイタリア車らしい、気難しさと美しさ。
空冷Lツインのメカニカルな鼓動感と、乾いた排気音。
そして何より、スチールパイプの美しいトレリスフレームに宿る「走る工芸品」としての佇まい。
現行バイクにはない、“触れてはいけないような神聖さ”すら感じるこの車体は、まさにカフェレーサーという言葉が生まれた時代の空気をまとっています。
ただし、当然ながら旧車にはリスクもあります。
故障・部品供給・メンテナンスコスト――どれも現行モデルとは比べものになりません。
それでも、そこに手を伸ばしたくなるのは、「バイクを所有すること」そのものに深い意味を感じている人だから。
ドゥカティ900SSは、単なる移動手段ではなく、時間と美意識をともに刻む“人生の相棒”になり得る存在です。
それを愛せる覚悟があるなら、このバイクは、あなたにとって唯一無二の一台になるはずです。
比較①:走行性能と乗り味の違い
まず最初に触れておきたいのが、実際に走ったときの“感触の違い”です。
見た目が似ていても、T120と900SSは「乗ってナンボ」の世界でまったく別の顔を見せます。
ボンネビルT120は、トルクフルで扱いやすく、どこまでも穏やかな加速が魅力。
街乗りでもツーリングでも、安心してスロットルを開けていける懐の深さがあります。
サスペンションやブレーキも現代基準で、たとえばワインディングでも「怖さ」より「楽しさ」が勝る設計です。
一方のドゥカティ900SSは、その真逆。
良くも悪くも“生き物”のような挙動で、アクセルを開けるごとにライダーの技量が試されます。
ステアリングの切れ込みや、エンジンのツキの鋭さ、クラッチの重さ…
それらすべてが一体となって、「操る快感」をダイレクトに伝えてくるのです。
簡単にいえば、T120は“乗せてくれるバイク”、900SSは“乗りこなすバイク”。
どちらが優れているかではなく、どちらの体験に自分が心を動かされるか――それが選ぶべき判断軸になるでしょう。
比較②:カスタム・スタイル・存在感
クラシックバイクに惹かれる理由のひとつが、「スタイルの美しさ」。
T120と900SSは、どちらも“カフェレーサー”というキーワードにおいて、一目で心を奪われる外観を持っています。
まずボンネビルT120。
ノーマルでも完成された佇まいですが、セパハンやバックステップ、ビキニカウルなどのカスタムパーツを加えることで、自分だけのカフェスタイルに仕上げることができます。
カスタムショップやパーツも豊富で、「ちょっとずつ理想に近づけていく楽しさ」があります。
一方、ドゥカティ900SSは、“すでに完成されている美”。
どこからどう見てもアートピースのような存在で、下手に手を加えるより、そのままの姿に価値があると言っても過言ではありません。
あの独特のカウルライン、フレームの曲線、スリムな車体――全てが唯一無二の存在感を放ちます。
街で並べば、T120は「かっこいいね」と声をかけられるバイク。
900SSは「これ…本物ですか?」と目を見開かれるバイク。
“注目される”という意味でも、両者はまったく違った世界を持っているのです。
比較③:メンテナンスと維持コスト
バイク選びにおいて、見落とされがちだけど本当に大切なのが「維持するという現実」です。
クラシックスタイルのバイクは、ときに“見た目以上の覚悟”が求められます。
まずボンネビルT120。
これはもう、現代バイクとしての信頼性は折り紙付きです。
定期的なオイル交換と車検を守れば、大きなトラブルも少なく、パーツの供給も安定。
国内に正規ディーラー網があり、整備も安心して任せられるのは大きなメリットです。
対してドゥカティ900SS。
こちらは“手間がかかる”というより、“手間をかける楽しみがある”バイクと言えるかもしれません。
ただし、部品の入手性は年式やモデルによって大きく差があり、専門の旧車ショップを頼る必要があります。
タイミングベルトやキャブレター調整など、知識と費用が必要なメンテ項目も多く、維持コストは想像以上になることも。
この差は、日常使いにおいても大きく影響します。
「週末に安心して乗りたい」ならT120。
「乗る前から手をかけて、触れて、向き合いたい」なら900SS。
どちらが“良い”というよりも、どちらの関わり方にワクワクできるか――そこが選びどころかもしれません。
比較④:リセールバリューと資産価値
「バイクは趣味だから、価値なんて気にしない」
そう言いたい気持ちはあるけれど、やっぱり“資産としての側面”も見逃せません。
とくにクラシック系のバイクは、年数を重ねるごとに“値上がりする乗り物”へと変貌することもあります。
まずボンネビルT120。
現行モデルとはいえ、トライアンフのクラシックラインは中古市場でも人気が高く、リセールバリューは比較的安定しています。
メンテナンス履歴がしっかりしていれば、数年乗っても高値で手放せるケースも多く、買い替え時のダメージが少ないのは安心材料です。
一方、ドゥカティ900SSは完全に「資産型」。
年式や状態によっては、すでにプレミアがついているモデルも多く、“乗れる骨董品”として扱われることも。
ただし、市場価値の判断が難しく、売却時は専門性の高い業者や個人売買の知識が求められます。
T120は、“乗って、楽しんで、また次へつなげる”バイク。
900SSは、“持ち続けることで育っていく価値”を楽しむバイク。
どちらも経済的な意味で損ではないですが、リセールの「スムーズさ」と「ポテンシャル」の違いを理解しておくと、後悔のない選択につながるはずです。
結論:どっちを選ぶべき?用途と価値観で選ぼう
ここまで読んでくださったあなたは、すでにお気づきかもしれません。
この2台――ボンネビルT120とドゥカティ900SS――は、単純な「性能比較」で選ぶバイクではないのです。
ボンネビルT120は、日々を彩る現実的な相棒。
ストレスのない走行性能、確かな安心感、そして自分好みに育てられる余白。
「クラシックバイクを快適に、長く付き合いたい」
そう思っている人にとって、これほど“ちょうどいいバイク”はありません。
一方で、ドゥカティ900SSは、人生の節目に選ぶ一台。
所有すること自体が誇りになり、維持する手間さえも愛おしいと思えるような存在。
「バイクに惚れ込んでしまった人」
「手間も時間もかける覚悟がある人」には、これ以上ない出会いになるかもしれません。
結局のところ、「どっちが優れているか」ではなく、
“今の自分が、どんな物語をバイクと一緒に走りたいか”で選ぶことが、いちばん納得できる選び方です。
あなたにとって、この比較が“心から欲しい一台”と出会うためのヒントになりますように。
よくある質問(FAQ)
Q1. クラシックバイク初心者でも、ドゥカティ900SSに乗れますか?
正直に言えば、覚悟が必要です。900SSは旧車ゆえに操作感やメンテナンスに独特のクセがあり、気軽に乗れるバイクではありません。
ただ、それを“楽しめる”と思えた瞬間から、あなたにとって特別な一台になります。メカや旧車文化に触れてみたいという気持ちがあれば、専門店のサポート付きでスタートするのもおすすめです。
Q2. T120は「おとなしいバイク」だと感じてしまいそうですが、楽しめますか?
決して“退屈なバイク”ではありません。T120は、扱いやすさの中にしっかりとしたトルク感と鼓動感があり、「余裕のあるライディングを楽しむ」ことに特化したバイクです。
ライダー次第でカフェスタイルやスポーツ寄りにも化ける懐の深さがあり、長く付き合える相棒になるはずです。
Q3. 維持費はどれくらい違いますか?
T120は現行車なので、定期点検やオイル交換など一般的なコストで済みます。年間5〜8万円前後が目安です。
一方、900SSは旧車ならではのパーツ代や工賃がかさむ傾向があり、調子を維持するには10万円以上を見込んでおくと安心です。もちろん、トラブルがなければもっと抑えられることもあります。
Q4. 資産価値を考えると、どちらの方が“得”ですか?
リセールでの“損をしにくい”のはT120、値上がりの可能性があるのは900SSです。
T120は一定の人気があり中古相場が安定しています。900SSは市場価格の振れ幅が大きく、年式やコンディションによってはプレミアがつくことも。ただし、それは“売る気がない人にこそ価値が宿る”タイプでもあります。
Q5. 最後に、どうしても選びきれません…。どちらを選ぶべきでしょうか?
自分がどんなライダーになりたいかを、静かに思い描いてみてください。
日常の中に心地よさを求めるならT120。バイクとの関係性そのものを深めたいなら900SS。
“どちらが良いか”より、“どちらのバイクと過ごす時間にワクワクするか”。
答えは、あなたの胸の中にきっとあります。